森博嗣著/「やりがいのある仕事」という幻想(朝日新書)を読んで
楽しみを見つけることは難しい。そんなことを森博嗣の新書を読んでいてふと思った。
そこに出てきたのは、仕事やあるいは物事全般を「楽しい」と思い込む人々の話だった。
さらには、周囲から羨ましがられたいとの思いから、「楽しい自分」を演出してしまう、そんな人々の姿だった。
僕自身、生活していくからには楽しく生活していきたいと思っているし、何かやりがいを見つけなきゃ、と焦っている部分も正直に言えば少なからずあった。
でも、森先生の鮮やかな人物描写を見ているうちに、「俺もそんな生き惑う人々と同じように焦ったり、迷ったりしながら好きなことを見つけていければいいな」というなんとも和やかな気持ちになったのは自分にとってもすごく不思議な感想で、この本を読んで良かったと思ったのはそういう部分だ。
本書の主張は、仕事という領域に限らず、「自分なりの楽しみ」を見つけた人生が最も幸福なのでは?というものだ。
自分中心に生きるか、他者からの評価に惑わされながら生きるか、の分かれ道がそこにはある。
楽しみを持っている人は、自分中心に生きることができる。
そうでない人は、自由を持て余し、自分で人生の舵を取ることに失敗する。
なんとも難儀な時代だと、この本を読んで思う。
僕自身、何度もインターネット糞食らえ、SNS糞食らえ、と思ってきた人間だ。
他人に対する見栄に疲れた人や、自分自身の生き方を見出せずに焦っている人に是非お勧めしたい。
それでもいいよ、と思わせてくれる要素がこの本にはあるようだ。