アンチ整理術(森博嗣著)紹介文
この本は自分自身の身の回りを整理・整頓することを通して、「自由な生き方」を手に入れよう、という趣旨の本である。
「自由な生き方」というと非常に広範な意味合いがあるが、要は、他人に惑わされない生き方、自己決定する生き方のことだ。
どうすればそのような生き方が手に入るのかというと、まずは「散らかった自己」というものを把握する必要がある。
自己が散らかっている、というのはすぐにはイメージしづらいかもしれない。この本の中では、理想と現実を客観的に把握できておらず、また周囲の目という「仮想他者」を過剰に意識した状態、ということになる。「仮想他者」というのは、人々が気にする他者という虚像のことであり、インターネット環境が整備された現在、ネット空間に存在する他者の目のことである。
こうした他者を過剰に意識し、理想と現実の把握ができていない状態は、極端に言うと、妄想状態、「夢を見ている」状態と言うことができる。
過度に高い理想に苦しめられた状態は人間にとって非常にストレスフルな状態と言える。
現実を真っ直ぐに見ない人はただの夢みがちな人にすぎない。
また、インターネット環境が整備された今の時代、「仮想他者」はネット空間の至る所に散らばった虚像と言える。
この状態を抜け出すことが大事だ。そうすることで、地に足のついた思考を手に入れることができる。
では、この状態を抜け出さない場合はどうなるだろうか?
端的に、夢の中に生きることになるのだ。
人々はこうした選択を生きている限り強いられていることになる。
しかし、この選択も自己の整理・整頓の内に含まれる。
つまり、こういうことだ。自己の整理・整頓とは、自分の価値観を整理すること。その上で、自分の現状、未来について考え尽くすこと。これは、自分の可能性を知ることにも繋がる。
自己の整理・整頓とは、自分一人で判断・決定し、行うことである。
これが、自分と向き合う生き方の面白さを教えてくれる。
これがすなわち「自由に生きる」ということなのだ。
整理・整頓する過程を通して、「自由に生きる」ことを学べるのが、本書の醍醐味だ。