ヒロカズの読書日記

このブログは、読書したことから、考えたことを書いていくブログです

2020-01-01から1年間の記事一覧

「お金の減らし方」森博嗣著(SB新書)紹介文

「お金の減らし方」とは不思議なタイトルの書物である。僕はこのタイトルに惹かれてこの本に興味を持った。 きっと森博嗣流の面白い考え方に触れることができると思ったのだ。 本書の中で、お金に困っている人に対して、森博嗣は次のような議論をふっかける…

おじいさんと自分だけの生き方

自分だけの生き方とは何だろう?最近よくそんなことを考える。 自分の人生がつまらない理由が最近なんとなくわかってきたのは、自分だけの人生、というものに思いめぐらせるようになったからだと思う。 きっかけは色々ある。見栄やプライドといった余計なも…

森博嗣著/「やりがいのある仕事」という幻想(朝日新書)を読んで

楽しみを見つけることは難しい。そんなことを森博嗣の新書を読んでいてふと思った。 そこに出てきたのは、仕事やあるいは物事全般を「楽しい」と思い込む人々の話だった。 さらには、周囲から羨ましがられたいとの思いから、「楽しい自分」を演出してしまう…

アンチ整理術(森博嗣著)紹介文

この本は自分自身の身の回りを整理・整頓することを通して、「自由な生き方」を手に入れよう、という趣旨の本である。 「自由な生き方」というと非常に広範な意味合いがあるが、要は、他人に惑わされない生き方、自己決定する生き方のことだ。 どうすればそ…

村上春樹と勉強の哲学

村上春樹は勉強に対してすごく深い哲学を持っている。 彼の著書「村上朝日堂」に入っている「ビリー・ワイルダーの『サンセット通り』」というエッセイはそんな彼の勉強に対する哲学を垣間見ることのできる逸品だ。 彼が言っていることは、勉強というのは「…

生きることとシンプルさ

生活スタイルを一新した。 理由は色々とあるが、「アンチ整理術」(森博嗣著)を読んだことが理由として大きいかもしれない。 様々なことに疲れていた。自分の手に負えないことを抱え込みすぎていたように思う。 本のいいところは自分では気づかないまま溜ま…

本の紹介「自分なりの生き方を教えてくれる二冊」

自分なりの生き方というものに憧れがある。最近そういった生き方の面白さに改めて気づかせてくれた本が二冊ある。「オリジナルに生きることの面白さ」というのがこの二冊の本のテーマであると僕は勝手に思っている。 ・先生はえらい(内田樹著/ちくまプリマ…

僕の周りの変わった人々①Hさん

Hさんは若者に負けないくらいのエネルギッシュさを持っている。いつもギラギラと何かを追い求めてやまない永遠の夢追い人、それがHさんだ。 Hさんと僕は最初、あまり打ち解けなかった。それは両人の性質の違いによるところが大きい。僕はどちらかというと、…

『ビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」』(村上春樹著、「村上朝日堂」より)感想文

勉強は嫌いだ、という人は多いと思う。僕は勉強に関する村上さんのこのエッセイがとても好きでよく読んでいる。僕も学生時代全く勉強しなかったのだが、でも何かしら毎日あったような気もする。でもそれを正面切って勉強とは呼びたくない。勉強に対しては誰…

最近友人からLINEが来た話

土曜日の夜にふとスマホを開くと、LINEが来ていた。 かなり珍しいことだ。見てみると、友人の、僕よりやや年配のNさんからである。 Nさんはかなり色々なことに気を使う、結構繊細な方だ。色々なことを考えているし、感性がかなり独特に発達している方だと思…

才能について(村上龍「おしゃれと無縁に生きる」を読んで)

才能というのが何なのか、このエッセイの中で村上龍は何かを示唆しようとしている。 冒頭で、村上龍はこんな風に書いている。「才能というのは、その人にペタッと貼り付いているわけでも、内臓のように体内、脳内に存在しているわけでもない。努力を続けるこ…

小説を読むことの難しさ

読書というのは奥が深い。読書という魔窟に分け入ってしまったことに気づいたのは、18の時に小説を読み始めてから、15年後の33歳の今になってからだ。この歳月において、沢山の小説を読み漁ったが、この間に僕は読書から何一つ教えられることなく、ひ…

こんな天気いい、みたいな感じにされてもなあ・・・とダンゴムシの気分で思う

今日は京都はすごく天気がいいのである。もう、ものすごくハッピー、うちら最高に気分がいいの!みたいな天気なのだ。南国リゾート地にいるかと見紛うようなキラキラとした陽光と、コンクリートに影を落とす緑の陰影が濃くって、なんだか若返ったような気に…

リリー・フランキーとコラムの魅力

僕にとって文章を生業にする人のイメージは作家ではなくコラムニストだ。 作家の書く文章はもちろん大好きだが、彼らの書いた文章はなんとなく「職業」のイメージがない。彼らの書くものは優雅すぎて「それで食っている」という卑しさを超越したものだ。 も…

布団の似合わない男

つい先日のことだった。とある友人と寝る前の楽しみについて話していた折のことである。一日の終わり、その日を締めくくるに足るイベントとして、どんな楽しみを享受しているか、そういった話題だったのだが、その方は、なんと、すぐに布団に入って寝る、と…

「終わった」という言葉と終わらない現実について

よくテンパっているときなどに、「終わった」という言葉を吐いてしまうことがある。 この言葉はなんとなく不思議なニュアンスを帯びている。 我々が「終わった」と言うとき、事態はまさに「始まっている」からだ。 言葉というものは往々にして反対の意味を帯…

わからない、について

今回は「わからない」という状況のもたらす利点について書いてみたい。これもかなり変な話だが、注意して聞いてみてください。 さて、一般に「わからない」というと馬鹿の代名詞のような意味であったり、脳味噌が足りていない、というような印象を人に与えて…

「知りません、わかりません」(村上春樹著「村上ラジオ3」)を読んで

勉強というのは欲得ずくでするものではない、とつくづく僕は思っている。 欲得ずくでなされた勉強は大した役には立たないのである。 何故だろうか? 学びというのは実はそれがどこでどう役立つかわからないという場合に最大の効果を発揮するからだ。 村上さ…

noteの有料コンテンツを買わねばならない理由と本屋で売ってる本を買わねばならない理由の違いと情報の価値について

noteの有料コンテンツの未来について考えた。 情報の価値について深く理解するために、従来の本屋で販売されている書籍と、noteの有料コンテンツの違いについて洗い出してみるのは有益なのではないかと思う。 簡単な相違点として、noteの有料コンテンツと、…

落ちこぼれと内田樹

大学院時代、作家になりたくて、唐突に大学院を退学した。 それからの歳月、読書を大量にこなしたが、ある日、次のような一節に出会った。「この人の言葉の本当の意味を理解し、このひとの本当の深みを知っているのは私だけではないか、という幸福な誤解が成…

継続と一人の小説家(村上春樹著「職業としての小説家」感想文)

何かを継続するにあたって、淡々と、というのは非常に重要なことなんだなあ、と思う。 特別なことはしなくていい。きちんとやるべきことをこなしていけばいいのだ。 そんな感慨を抱く時、僕は村上春樹さんの「職業としての小説家」という本を思い出す。 この…

小さな脳という観点

友人から聞いたのだが、人間の脳というのは意外に小さいらしい。定かなことはわからないのだが、友人の話では「両手を握りしめてくっつけたぐらいの大きさ」だということである。普段自分が考えたり感じたり、といった自分の世界がこの大きさの中に入ってい…

内田樹著「先生はえらい」を紹介する

最初に断っておきたいのだが、この本はえらい先生がいる、という本ではない。それにもかかわらず、先生はえらい、ということを主張する本である。何を言っているのかすぐにはわからない。まるで禅問答のようである。 結果的に「誰でも先生になれる」という話…

子供とSNSについて

僕はペットは寂しがりな人のものだと思っている節がある。寂しがり、と言っても、単に一人でいるのが耐えられない、とかそういうことを言っているのではなくて、人との一つの接点としてペットを飼っている人が結構いるのではないか、とそんなことを思うのだ…

お散歩効果の偉大さについて

新しいことを始めるのには不安が伴う。 結果を残したいという気持ちが焦りに変わってしまってはうまく仕事がはかどらない。 この状態を抜け出すのに一番いい方法はリラックスできる時間を持つことだ。 僕の場合はとにかく歩く、という方法を採用している。 …

夜空の下で考えたこと

弁当屋に行った帰り道、夜の道を歩きながら色々なことを考えた。 いつもなら弁当を食いながら、ビールでも飲みたいな、と思うところ、最近は、酔って過ごす時間よりも、机に向かう時間を優先したい、と思っていること。 自分の将来のこと。誰か気の合う人を…

自作小説「本屋」

本屋をぶらぶらするのをやめた。 本屋には何冊もの新刊が積まれている。 こうした本の中からお気に入りの一冊を見つけるのは至難の技だ。 どうして我々はこうした魅惑から逃れられようか。 ある日一冊の書物が我々の人生を変えてしまうかもしれない。 そして…

大人であることについて

大人であることはどういうことなのか。それは子供であるということである。 子供でない大人は存在しない。というか、「まだ自分は子供だ」と言い得る人間のことを、「大人」というのである。 大人にとって、最もほっとする瞬間が、「まだ自分は子供なのだ」…

清潔な生活(村上春樹著「村上朝日堂」)感想文

清潔な生活(村上春樹著「村上朝日堂」)を読んだ。このエッセイには人としての生活の頼りなさが爽やかな筆致で描かれており、読むものの心になんとも言えない切なさを残す。人間はどんどん変わっていく。それは年を取る以上仕方のないことだ。 村上さんの学…

大人であることの子供っぽさについて(村田沙耶香著『「年齢にあったいいもの」の謎』を読んで)

一言で言うと「ブランドものつけるような歳になっちゃったんだよな〜。参ったな〜」という内容のエッセイ。しかし、そこには当然のことながら、「大人であるとはどういうことか」という哲学的なテーマが見え隠れしている。それが村田沙耶香さんのエッセイの…